初めに、神は天と地を創造された。地は混沌であって、闇は深淵の面にあり、
神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。「光あれ」こうして、光があった。
創世記1章は、紀元前6世紀、捕らわれの身となった捕囚期に書かれた。国は滅び体制は崩壊した変動と荒廃の時代である。
創世記1章は、こうした激動期の、物事を根本から見つめ、根底から考えようとした時代の文書である。決して荒唐無稽な昔話、
世界のどこにでもある創造神話ではない。世界と人間の存在の確かさが何処に在るのかという、その根本的な課題に答えたもので
ある。ここで創世記1章が深く見つめているのは世界の不確かさである。第一に「地は混沌」としている。混沌とは「形なく虚しく」
とか、「混乱、瓦礫の山」と言った意味で、この世界が神の審判と神の激しい怒りのもとにある世界だと見ている。第二は「闇が
深淵の面にあり」と、この世界は底なしの深い暗黒に覆われている。これが著者の見た現実認識である。第三は「神の霊が水の面を
動いていた」ことだ。「霊」には他に風・息と言う意味がある。これを風と訳すと「暴風が水面を吹き荒れていた」となる。