「 主にむかって新しき歌をうたえ。地の果てから主をほめたたえよ。」(口語訳10節)
しかし、そうした現実の中で人間の常識を打ち破って「新しい歌を歌え」と預言者は告げます。この「新しい」とは、私たちの
考えるような新しさでなく、驚いたことにこの言葉は「終り」を意味します。世界の終り、人生の終り、所謂終末です。その終り
にこそ、新しい歌、神を褒め称えて止まない讃美の歌があると言うのです。
しかし、今、突然そんなことを言われても、誰も、中々理解できないと思います。何故なら、私たちの生きる現代社会は、無批判
に科学の進歩を受け入れた近代合理主義、人間中心の世界だからです。私たちは何事も理論的に、しかも計算し尽くされた厳密な
科学的シュミレーイションによって物事を判断し、人間の頭脳で物事全てを捕らえようとします。ところが、人間の考えと言うも
のは、元々自己中心で、損得や利害から離れることが出来ません。従って肉の人間は利害を超える、新しい未来に生きることが
出来ないのです。ただ死をもって終るしかありません。現代は本当の意味での未来と希望を失った時代です。預言者の生きた世界
もこれと同じでした。