泉北伝道所 月報 2013年6月
月報巻頭言
民衆から好意を寄せられた教会
使徒言行録第2章43~47節 大阪北教会牧師 森田幸男
43 すべての人に恐れが生じた。使徒たちによって多くの不思議な業としるしが
行われていたのである。 44 信者たちは皆一つになって、すべての物を共有にし、
45 財産や持ち物を売り、おのおのの必要に応じて、皆がそれを分け合った。
46 そして、毎日ひたすら心を一つにして神殿に参り、家ごとに集まってパンを裂き、
喜びと真心をもって一緒に食事をし、 47 神を賛美していたので、民衆全体から
好意を寄せられた。こうして、主は救われる人々を日々仲間に加え一つにされたので
ある。 |
これが初代教会の姿です。教会は首都エルサレムの空気さえ変えました。「すべての人に
恐れが生じた。そして使徒たちによって多くの不思議な業としるしが行われていた」とあります。
「行われていた」は行為の持続を表します。「生じた」も継続を表します。それだけでなく
この箇所に出てくる動詞は全て持続、継続を表します。
「すべての人に恐れが生じた」の「恐れ」には「畏敬」の「畏」を当てるのが相応しいでしょう。
「人」と訳された言葉は通常の「人」を表す言葉ではなく、「息」とか「呼吸」を表す言葉です。
つまり、教会の息づかいが畏れに満ちていたことを表しています。
この事に並行して「使徒達によって多くの不思議な業としるしが行われていた」のです。
「多くの不思議な業としるし」は、イエス様が為さった「奇跡」の数々です。それが使徒たちを
通して次々に生じたのです。復活の主イエス・キリストは、弟子たちを通して、その御業を
続けておられます。その一例が 3 章 1 節以下に記された『美しの門』の奇跡です。
ここに「民衆全体から好意を寄せられた」とありますが、これも初代教会の様子です。この
「好意」という言葉は、普通「恵み」と訳される<カリス>です。教会が「民衆全体から恵みを
寄せられた」のです。この「好意」は気持ちだけではなく、人々は教会に施しをしたのだと思います。
教会に好意を寄せた人たちは、教会が、互いにすべてを分け合って暮らしている様子を目撃します。
そしてその生活ぶりは非常に魅力的でした。「カリス」には「魅力」という意味も「敬意」と
いう意味もあります。教会が実に魅力的だったのです。「この人たちは一体、何なんだろうか。
この振る舞い、生活ぶりは。何も持たないようでありながら、実に豊かである。しかし実際には、
困窮しているようだ。」そういう教会を見て、人々は何かしないではおれなくなったのでしょう。
「カリス」は、翻訳不可能な「神の善さ」の全てです。そのカリスを民衆が教会に寄せたのです。
正にこれも奇跡です。
「主は救われる人々を日々仲間に加え一つにされた」とありますが、直前の 2 章 41 節には、
「ペトロの言葉を受け入れた人々は洗礼を受け、その日に三千人ほどが仲間に加わった」と
記されています。そして「信者たちは皆一つになって、すべての物を共有にし、財産や持ち物を売り、
おのおのの必要に応じて、皆がそれを分け合った。そして、毎日ひたすら心を一つにして神殿に参り、
家ごとに集まってパンを裂き、喜びと真心をもって一緒に食事をし、神を賛美していた」とあります。
正に教会は活けるキリストの体です。
復活の主イエス・キリストの居ます所、そこに「不思議な業としるし」が絶えることはありません。
私たちも恵みをうけつつ、感謝しつつ、賛美しつつ、歩み続けたく思います。